人と手をつなぐのが嫌でした…見浦彰彦さん語る手掌多汗症

公開日: 更新日:

 ただの汗っかきな体質だと思って生きてきましたが、ちゃんと「手掌多汗症」という病名がありました。僕がそれを知ったのは2019年1月です。きっかけはライブでお客さんにサインを書いて渡したとき、手汗で文字がにじんでしまって、相方に「その手汗、ちゃんと調べてみれば?」と言われたことでした。

 小学生の低学年の頃から人とはちょっと汗の量が違うと思い始めていました。姉と手をつないだとき「なんでそんなに汗かいてるの?」と言われて、「え? みんなは違うの?」となって、自分の汗がコンプレックスになったんです。

 汗は顔面、脇、足の裏なども人より多めでしたが、手汗が一番生活に支障があって、授業ではノートが、テストではテスト用紙が濡れてヨレヨレになるし、破れるし、何より気持ち悪いと思われるのが怖くて、人と手をつなぐのが嫌でした。

 大人になってからは、こんな仕事をしているので、この特性を生かして何かできないかと考え、“ふえるワカメは手のひらで増やせるか実験”をやってみたりしました。僕の手のひらは、ジッと見ているだけで水滴が出てくるのが見えたんです。結果、たしかにワカメは少し増えました。けど、日常ではスマホが反応しないし、大事な書類も濡れて書けなくなるし、手作業全般で問題が多い状態でした。ただ、体質だと思い込んでいたので、治療という発想はまったくなかったんです。

 相方に「調べてみれば?」と言われて初めて「手掌多汗症」という病名を知り、ちゃんと保険が効く手術があるとわかりました。

 病院ではまず、同じ症状の人たちを集めた合同説明会があり、病気の説明や手術の解説、手術の副作用までレクチャーがありました。そして各自症状を診てもらったら、僕は重度の部類でした。一般的に汗は体温調節などの生理的な発汗と、緊張や興奮などによる精神的な発汗があり、手掌多汗症の汗は後者と考えられているようです。

 手術は、両脇から内視鏡を刺して、胸部交感神経の手汗に関係する経路を焼き切るというもの。

 それをすれば確実に止まるそうなんです。全身麻酔で時間的にはほんの10分ぐらいの手術でしたが、目覚めたらもう手汗が止まっていたので本当に感動しました。

■術後合併症で胸と背中に異常な量の汗が…

 ただ、この手術によって僕は次なる代償を払うことになりました。「代償性発汗」といって、今まで出なかったところに汗をかくようになるという術後合併症があるのです。僕はそれが胸と背中に出てしまいました……。しかも異常な量。軽く小走りしただけでトレーナーに汗が染み出てしまうくらいです。

 多くの人は1カ月ぐらいでその症状も引いていくらしいのですが、まれに戻らない人もいると言われていて、僕はそのまれな人の方でした。

 胸と背中の汗は別の病院を紹介され、保険が効かない治療と知りました。そして去年11月に、なんと20万円ぐらいかけてその治療を受けたんです。「ミラドライ治療」と言って、電子レンジの要領でマイクロ波によって皮膚の中の汗が出る部分を焼くというものです。

 行われている最中は、掃除機の中ぐらいの強さで吸われている感覚なのですが、終わった後で見たらエグさにビックリ! 特に背中は農具フォークで引っかいたような真っ赤に腫れた縦線が背面いっぱいにガッツリあって、われながら引きました。でも、見た目ほど痛みはないんです。薬も塗り薬だけですし、服を着ても寝ころんでもまったく平気でした。

 普通の人は、その1回でだいたい汗が止まるそうなのですが、僕はまだ量が多いので何度か治療が必要なようです。「次回からは無料でOK」と言われているので、また近々行くと思います。

 手掌多汗症の手術は保険が効いたので7万~8万円でしたが、胸と背中の代償性発汗は自費でしたから、金銭的にも大きな代償でしたね。おかげさまで手汗は改善されてストレスがなくなったんですけど、妻には逆に「つまんない」とがっかりされました。

 実は妻は僕の手汗を面白がって結婚してくれたんです。出会った当時、普通ならビチョビチョの手なんて気持ち悪くて引くじゃないですか? でもある日コンプレックスを打ち明けたら、「いいじゃん。やった、助かる!」と言ってくれたのです。そう、彼女は乾燥肌だったのです。だから僕の手のひらから水滴が出てくるのをジッと見て、「すごいね」ってテンションが上がっていたんです。それまでコンプレックスでしかなかったんですけど、「世の中にはこんな人もいるんだ」とすごく救われたのを覚えています。

 医師によれば手掌多汗症は、100人に1人の割合でいるそうです。手術すれば確実に手汗は止まります。ただ、代償性発汗が出るか出ないかは賭けのようなもの。僕クラスの症状はまれですけどね。

(聞き手=松永詠美子)

▽みうら・あきひこ 1984年、広島県生まれ。東京アナウンス学院芸能バラエティ科在学中の2004年に田島直弥とお笑いコンビ「アイデンティティ」を結成。ツッコミを担当している。2015年に相方・田島の“野沢雅子(声優)”ものまねネタでブレークし、テレビ、ラジオ、舞台(お笑いライブ)などで活躍中。2017年に女優の串田えみさんと結婚。現在、YouTubeチャンネル「まろに☆え~るTV―GT」にレギュラー出演しているほか、中京テレビ「それって!?実際どうなの課」にも出演中!

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  2. 2

    大阪・関西万博の前売り券が売れないのも当然か?「個人情報規約」の放置が異常すぎる

  3. 3

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  4. 4

    ヤクルト茂木栄五郎 楽天時代、石井監督に「何で俺を使わないんだ!」と腹が立ったことは?

  5. 5

    バンテリンドームの"ホームランテラス"設置決定! 中日野手以上にスカウト陣が大喜びするワケ

  1. 6

    菜々緒&中村アン“稼ぎ頭”2人の明暗…移籍後に出演の「無能の鷹」「おむすび」で賛否

  2. 7

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  3. 8

    ソフトバンク城島健司CBO「CBOってどんな仕事?」「コーディネーターってどんな役割?」

  4. 9

    テレビでは流れないが…埼玉県八潮市陥没事故 74歳ドライバーの日常と素顔と家庭

  5. 10

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ