青木さやかさん2度の肺がん手術を振り返る「症状らしいものが何もなく、間違いかなと…」
青木さやかさん(女優/49歳)=肺腺がん
2017年8月に「胸腔鏡下右肺上葉区域切除」という手術を受けました。肺には左右合わせて5つの肺葉という区域があるらしいです(右肺は上葉、中葉、下葉の3つ、左肺は上葉、下葉の2つ)。私の場合、右肺の上葉部に小さい腫瘍があり、それを切除しました。
それから2年後、19年には左肺に同じような腫瘍が見つかり、それも手術で切除しました。転移ではありません。「このタイプの肺腺がんはできやすいので、できたらその都度取っていきましょうね」と最初から言われていました。
がん家系なので、がんはそんなに遠い病気ではありませんでしたけれども、自分がなるというのは全然違う話でしたし、なるとしても婦人科系かな、と勝手にイメージしていて「肺がん」はまったく想像していませんでした。症状らしいものが何もなかったこともあり、「間違いかな」と思ったくらいです。
発見のきっかけは14年の人間ドックでした。健康について特に気にかけていたわけではなく、先輩に誘われたので受けてみたら肺に影が見つかったのです。
その時点では影の正体が何かわからないので、経過観察になりました。初めの頃は3カ月ごとに検査をし、その後、半年に1度、1年に1度と間隔が空いていった中、17年春の検査で「がんの可能性が高い」と診断されました。
3人の先生に相談して、2人の先生は取ったほうがいいとおっしゃって、1人はもう少し経過観察でもいいんじゃないかという見解でした。
私が手術を選んだ理由は、職業的なものと性格的なものの2点があります。職業的には「周囲に迷惑をかけたくない」という思いです。急に入院になるより、ある程度タイミングを選べるうちに手術したほうがいいと思いました。何より、母(当時闘病中。19年に他界)に自分の病気を知られたくなかったのが大きいです。もし、急な降板などになれば病気を公表しなければならない。そうなると母にも知られてしまう。それは避けたかったというのが本音です。
性格的には、精神衛生上、がんの可能性が高いといわれているものを抱えたまま生活するのは、私には向いていなかったということです。
ちょうど舞台の稽古中だったので、主治医の先生と相談して公演終了後に手術をしました。手術は初めてのことだったので怖かったです。体や声がどうなるかもわかりませんでしたし、娘のことや経済的なことがやはり心配でした。
腫瘍は小さかったのですが、できた場所が難しいところだったようで、手術は約5時間かかり、術後は麻酔が合わず、気持ち悪さと高熱で大変でした。それでも1週間ほどで退院でき、公表することなく仕事復帰できました。
■7月にはコロナ感染で入院も経験
2年経って新たに左肺に見つかったときは、「早いな」と思いました。ただ、前回よりも取りやすいところだったようで手術時間は短く、やはり1週間ほどで退院できました。
手術をしてみてすごく勉強になったのは、「手術を受けるには手術ができる状態の体にしておかないといけない」ということです。一気に体力を奪われるので、標準的な体重であったり、基礎的な体力は大事だなと。
術後は、より健康的な生活を心がけています。自炊が非常に多くなりましたし、調味料は無添加にし、ときどき酵素玄米を食べたりしています。あとは早寝早起き。もうすっかり元通りになっているので、こうした取材がないと病気したことを意識しないくらいです。 ところが、今年7月に新型コロナウイルスに感染しまして、娘と一緒に9日間入院しました。初めはカロナール(解熱鎮痛剤)を飲んで自宅療養していましたが、熱が39度になり、血中酸素飽和度は93%、何より喉の痛みがつらくて息がしづらく水も飲めない状態になりました。
主治医に相談したところ、「入院を視野に入れて保健所に相談してみて」と助言され、その通り保健所の指示を仰いで入院しました。肺腺がんという基礎疾患があったから入院できたのだと思います。
病気から得た教訓は、病気になったことよりも、病気になるかもしれないという不安のほうが怖いと気づいたことです。「また病気になるかもしれない」と思いながら生活するのは楽しくないし、健康的ではないでしょう? 不安をまったく持たないで生きるのは難しいですけれど、なるべく不安を持たずに生きるにはどうしたらいいかを考えるようになりました。
心掛けているのは「日々きちんと生活する」ことです。早起きをして家事をして、仕事をして、子供のあれこれをして、時間があれば運動もするといった日常です。忙しくすることもそのひとつかな。後悔しないよう、楽しく生活することを考えています。
(聞き手=松永詠美子)
▽青木さやか(あおき・さやか) 1973年、愛知県生まれ。フリーアナウンサーを経て、芸人に転身。2003年に現在の事務所に所属し、女優として活躍している。近年は執筆活動にも力を入れ、著書に「母」、最新刊「厄介なオンナ」などがある。また、TWFの会(動物、自然、生活環境の保護活動をするNPO法人)でボランティア活動にも取り組む。
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