著者のコラム一覧
天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

先人が取り組んだ感染症対策が外科手術を大きく進歩させた

公開日: 更新日:

 ゼンメルワイスの功績が認められたのは、19世紀後半に感染症は病原菌によって起こることが発見されてからでした。いまでは「感染制御の父」と呼ばれています。

 同時期の19世紀後半には、ドイツの外科医シンメルブッシュが手術器具類の煮沸蒸気消毒法を確立しました。100度程度のお湯や蒸気で病原菌を死滅させる方法で現在はほとんど行われていませんが、「シンメルブッシュ式」という名前が残るくらい画期的なものでした。

 その後、目的の病原菌だけを殺す「消毒」に加え、増殖するあらゆる微生物を完全に除去する「滅菌」へと発展していきます。そんな研究や検証が進んでいく中で、細菌そのものが悪さをする場合と、細菌が出す毒素が悪影響を与える場合があることがわかりました。また、比較的、熱に強い細菌や、酸素がない環境でも増殖する嫌気性菌というタイプも判明しています。

■手術用手袋は二重装着が推奨されている

 このように、外科手術の進歩は感染症対策に取り組んだ先人たちによってもたらされたのです。実際、手洗いをはじめとする消毒や滅菌といった分野は、医療における「トランスレーショナルリサーチ」(橋渡し研究)の“はしり”と言っていいでしょう。基礎研究で得られた成果を臨床に応用し、さらに臨床での結果を基礎研究にフィードバックして新しい医薬品や医療機器の開発につなげ、医療の発展を目指す方法です。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  3. 3

    高市内閣の閣僚にスキャンダル連鎖の予兆…支持率絶好調ロケットスタートも不穏な空気

  4. 4

    葵わかなが卒業した日本女子体育大付属二階堂高校の凄さ 3人も“朝ドラヒロイン”を輩出

  5. 5

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    隠し子の養育費をケチって訴えられたドミニカ産の大物種馬

  3. 8

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 9

    高市早苗「飲みィのやりィのやりまくり…」 自伝でブチまけていた“肉食”の衝撃!

  5. 10

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑