最新鋭機によるハイパーサーミアでがん治療はどう変わるか
「がん組織は、42・5度以上に加温すると、タンパク質や脂質が熱変性により酵素活性が失われ、細胞膜や細胞内器官に異常をきたします。とくに細胞内でエネルギーを作るミトコンドリアは機能が低下するため、徐々にがん細胞が死んでいきます」
放射線はその通り道の電子をはじき飛ばすことでがん細胞を壊すが、その点が違う。従来の温熱療法治療器は発振部に真空管を用い電極間の設定条件などを人が管理してきたが、今回、千葉県がんセンターに設置される「サーモトロン―RF8」は、発振器がソリッドステート化されており電極間のセッティングが自動化され、コンピューターにより操作性と治療の精度が格段に向上しているという。
しかし、温熱によりがん細胞が死滅するのなら、一律に加熱される正常細胞もダメージを受けるのではないか。
「心配はいりません。人体の中は恒常性が保たれるようにできていて、熱が加わると正常な細胞の周囲の血管は拡張して血流が増し、熱を外に逃がす仕組みになっています。がんの周りにも血管はありますが、新生血管と呼ばれる、急ごしらえのもろい血管であるため、血管が拡張せずに熱がこもってしまい、正常細胞よりも早く熱の影響を受けてしまうのです。しかも、がんの塊の内部は血液が通わず、低酸素状態です。低酸素の細胞は高酸素の細胞に比べて熱に弱い。しかも、酸素を使わずにエネルギーを作るがん細胞は大量のグルコースを必要とするために乳酸がたまりやすく、酸性化しやすい。酸性化すればするほど熱に弱くなるのです」