そして、ポールとリンダ夫妻は本格的な菜食主義を選んだ
「スコットランドの小さな丘の上のキャンベルタウンの近くにある牧場で暮らしていたときのことです」から始まる箇所に興味深い記述があります。
ある日の昼時、2人のテーブルの上の皿には、ローストされた子羊の肉が盛られていました。ふと窓の外に目を向けると、草原で楽しそうに遊んでいる羊の姿が目に入ります。彼らが飼っている子羊でした。その瞬間、2人はある思いに駆られます。リンダはこうつづっています。
「そのとき、私たちが食べようとしているものが、外で遊んでいる子羊たちの仲間だということに気づいて、突然おそろしくなってしまったのです」(同書)
そしてこう続けます。
「生きた動物たちと、お皿に盛られたものを結び付けた瞬間に、もう二度と肉を食べまいと決心しました。この日、ポールと私はベジタリアンになることを決めたのです」(同書)
ポールはそのことが忘れられなかったのか、後に「メアリーの子羊」という美しい曲を発表しています。1970年代初め、ポールとリンダの食生活は“肉を取らない”スタイルに変わりました。第一に動物愛護への思いからだったことがうかがえます。