著者のコラム一覧
坂本昌也国際医療福祉大学 医学部教授 国際医療福祉大学 内科部長・地域連携部長

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

健康な人より意識してタンパク質を取らなければならない理由

公開日: 更新日:

血糖値が上昇すると筋肉が減少

 では、なぜ糖尿病で筋肉量が減るのでしょうか? そのメカニズムを2019年、神戸大学の研究グループが世界で初めて明らかにしました。

 研究グループは、マウスを使って実験。マウスを糖尿病にすると、筋肉量の減少に伴い、筋肉の減少を促すタンパク、KLF15が増え、筋肉だけでKLF15をなくしたマウスでは、糖尿病になっても筋肉量が減らないことを発見。つまり、糖尿病でKLF15の量が増え、それが筋肉減少に関係していることを突き止めたのです。

 次に調べたのは、どのようなメカニズムでKLF15が増えるのか? すると、「健康な人では、WWP1というタンパクが、別の小さなタンパクであるユビキチンをKLF15に結合させ、KLF15の分解速度を速める。しかし、血糖値が上昇するとWWP1の量が少なくなり、KLF15の分解が抑制され、筋肉で蓄積して量が増え、筋肉減少につながる」ということが分かったのです。

 残念ながら現段階では、KLF15の働きを弱める薬や、WWP1の働きを強める薬はありません。食事で意識してタンパク質を摂取し、運動で筋肉量を上げるしかない。特に高齢者は誰もが筋肉量が低下するので、「糖尿病+高齢」という2つの筋肉量減少の要因を持っている人は、毎回の食事で意識してタンパク質を取る必要があります。

 もし、「食べられる量が減ってタンパク質も十分に取れない」「糖尿病で心筋梗塞脳卒中、心不全などを起こしていて活動量が少なくならざるを得ない」という人は、タンパク質が粉末状になったプロテインを活用するのもいいでしょう。適度の運動と組み合わせるとさらに効果的です。

 ただし、前述の通り、糖尿病で腎機能が低下している人は、タンパク質の取り方には注意が必要です。タンパク質の摂取量が制限されるので、どうタンパク質を摂取するか、主治医に相談してください。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    参政党が消せない“黒歴史”…党員がコメ農家の敵「ジャンボタニシ」拡散、農水省と自治体に一喝された過去

  2. 2

    極めて由々しき事案に心が痛い…メーカーとの契約にも“アスリートファースト”必要です

  3. 3

    遠野なぎこさんを追い詰めたSNSと芸能界、そして社会の冷酷無比な仕打ち…悲惨な“窮状証言”が続々

  4. 4

    ドジャース大谷翔平がついに“不調”を吐露…疲労のせい?4度目の登板で見えた進化と課題

  5. 5

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  1. 6

    清水賢治社長のセクハラ疑惑で掘り起こされるフジテレビの闇…「今日からシリケン」と“お触り続行”の過去

  2. 7

    カブス鈴木誠也「夏の強さ」を育んだ『巨人の星』さながら実父の仰天スパルタ野球教育

  3. 8

    千葉を「戦国」たらしめる“超過密日程”は今年の我が専大松戸に追い風になる手応えを感じています

  4. 9

    趣里はバレエ留学後に旧大検に合格 役者志望が多い明治学院大文学部芸術学科に進学

  5. 10

    参政党が参院選で急伸の不気味…首都圏選挙区で自公国が「当選圏外」にはじかれる大異変