【肺炎】ニューキノロン系抗菌薬は結核を否定してから使う
前回、「ニューキノロン系抗菌薬が結核の治療にも使われることがある」というお話をしました。
ニューキノロン系抗菌薬は肺炎や尿路感染など多くの感染症に用いられる薬です。多く用いられるということは、それだけ耐性菌も増えてしまうリスクが懸念されます。実際、大腸菌におけるニューキノロン系抗菌薬への耐性は大きな問題になっています。
また、結核と同じ呼吸器疾患である肺炎の治療でニューキノロン系抗菌薬を使う場合には、必ずその患者さんが結核ではないことを検査しておかなければなりません。
もし結核だった場合、ニューキノロン系抗菌薬が効果を示し、症状が少しだけ改善する可能性があります。ただ、結核は複数の抗菌薬を併用して数カ月間にわたる治療が必要となる疾患です。ニューキノロン系抗菌薬を単剤で数日間服用しただけで結核が治癒することはありえません。
それなのに、少しだけ症状が改善することによって、結核の発見自体が遅れる可能性が出てきます。発見が遅れるとそれだけ治療も遅れますし、多くの人にうつしてしまう可能性も出てきてしまうのです。さらに、単剤での結核治療は、耐性菌の出現を招くリスクも高めます。
日本は結核の「中蔓延国」です。肺炎治療の際も、結核はしっかり否定しておく必要があるのです。