著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

歌手・水木一郎さんが他界…肺がんの脳転移は放射線と薬の順番で予後が変わる

公開日: 更新日:

 体のどこかにできたがんが、脳に転移したのが転移性脳腫瘍です。全がん患者のうち10人に1人が脳転移を起こし、その50%が肺がん由来で、15%が乳がん由来。転移性脳腫瘍との関係においても、肺がんの治療はとても重要です。

 転移性脳腫瘍患者の死因を検討した結果、元の肺がんが原因となったのがほとんどで、転移性脳腫瘍が直接の原因となったのは15%に過ぎませんでした。そのうち80%が髄膜播種です。

 つまり、転移性脳腫瘍でも、脳の実質にとどまる脳転移なら、命に影響しないことがほとんどということ。この差は、とても大きい。私の患者さんでも、脳転移が単発か少数の方は長期生存どころか、治癒したケースもあるのです。脳転移と髄膜播種とは、別の病気といってもよく、脳転移は治療で制御可能ということなのです。

 その治療は何かというと、ピンポイントでがんに放射線を照射できる定位放射線治療と分子標的薬のチロシンキナーゼ阻害薬の組み合わせで、同時併用がベスト。実は、それぞれの治療の順番を調べた研究により、それが最も効果的であることが示されています。定位放射線治療の中でも、ガンマナイフとの組み合わせです。

 ところが、日本ではチロシンキナーゼ阻害薬を先に投与してから、放射線治療が行われることが少なくありません。肺がんや乳がんなどで脳転移が見つかったら、ガンマナイフと分子標的薬を同時に行うこと。ぜひ頭に入れておいてください。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    名球会入り条件「200勝投手」は絶滅危機…巨人・田中将大でもプロ19年で四苦八苦

  2. 2

    永野芽郁に貼られた「悪女」のレッテル…共演者キラー超えて、今後は“共演NG”続出不可避

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    07年日本S、落合監督とオレが完全試合継続中の山井を八回で降板させた本当の理由(上)

  5. 5

    巨人キャベッジが“舐めプ”から一転…阿部監督ブチギレで襟を正した本当の理由

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    巨人・田中将大が好投しても勝てないワケ…“天敵”がズバリ指摘「全然悪くない。ただ…」

  3. 8

    高市早苗氏が必死のイメチェン!「裏金議員隠し」と「ほんわかメーク」で打倒進次郎氏にメラメラ

  4. 9

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  5. 10

    三角関係報道で蘇った坂口健太郎の"超マメ男"ぶり 永野芽郁を虜…高畑充希の誕生日に手渡した大きな花束