入院した高齢者の3分の1がせん妄を経験…発症の半分は入院中に
せん妄の予防が認知機能低下の予防につながる
せん妄とは、どういう症状か? 精神疾患の国際的な診断基準「DSM-5」では、「意識と注意の障害」「認知の全体的な障害」「精神運動障害」「睡眠-覚醒周期の障害」「感情障害」が程度に関係なく起こるとされています。
具体的には、次のような症状が典型的です。
・ぼんやりしている、朦朧としている
・見えるはずのないものを見えると言ったり、いるはずのない人の存在を訴えたり、つじつまが合わないことを口にする
・注意力が散漫になる
・夜眠らずに興奮する
・睡眠と覚醒のリズムに障害が起こり、昼夜逆転になる
・突然怒り出す、泣き出す、夜に興奮状態になるなど、感情が不安定になる
・入院中、点滴やチューブを自分で抜いてしまう
せん妄と認知症は双方に関連すると述べましたが、現時点で認知症ではない場合、せん妄と認知症を区別して考える必要があります。せん妄の促進因子をできる限り除去することでせん妄を予防し、認知機能低下に結びつくのを回避するのです。
せん妄と認知症の違いとしては、まずせん妄の発症は「急激に」起こること。初期症状は「幻覚、妄想、興奮」であり、認知症の「記憶障害」とは異なること。
また、せん妄は「夕刻から夜間に発症することが多い」のですが、認知症ではそういった変動は少ないです。せん妄の症状は一過性で、数時間から数日でなくなります。改善した後は、発症前と同じ状態に戻っています。認知症で認知機能が低下している場合は、そうはいきません。
なお、せん妄には、3つのサブタイプがあります。過活動型、低活動型、混合型です。かつては、過活動型がせん妄の一般的なタイプと考えられていましたが、全体の25%ほどで、ほとんどが低活動型だといわれています。
その特徴は次の通りです。
【過活動型】
24時間のうちで運動活動量が増加し、活動コントロールが障害される。入院中に安静を保てず、安全面で問題になることもある。
【低活動型】
24時間のうちで、活動量・発語量の低下や活動速度・発語速度の低下などが見られる。
【混合型】
24時間のうちで、過活動型と低活動型の両方が見られる。急速に変動することもある。