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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

歌手の杉田あきひろさんは「顎の骨が露出」 がん治療前は口腔ケアが重要

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 喉頭がん咽頭がん手術をすると、声帯も切除して声を失うリスクがあります。その声を守るための治療が、放射線と抗がん剤を同時に行う化学放射線療法です。

 抗がん剤も放射線も、顎骨壊死を起こす恐れがあり、さらに骨粗しょう症やがんの骨転移に使用されるビスフォスフォネート系薬剤でも顎骨壊死を生じることがありますが、それらの治療に加えて歯科的要因が重なるとより顎骨壊死を起こしやすくなります。

 放射線の治療前に抜歯をすると、顎骨壊死の発生率は10%以下ですが、照射後に抜歯をすると、30%以上に上昇。なぜかというと、口の中の衛生状態と関係しているのです。

 これらの治療をする患者は比較的高齢で、歯周病や虫歯などで歯が抜けやすいことがあります。口の中にはたくさんの細菌がいて、歯垢1ミリグラム中には10億個の細菌が。抗がん剤や放射線などの治療後は免疫力が下がるため、顎骨壊死が生じると歯周病菌などによって病状が悪化しやすいことが影響していると考えられます。

 その点で抜歯が必要な人は、化学放射線療法などが始まる2~3週間前に抜歯をして、がんの治療が遅れないようにすること。

 もうひとつは、事前に口腔ケアをしっかり受けておき、治療中も治療後も歯磨きなどを丁寧に行うことです。

 口の健康が、がん治療に密接に関わっていることを覚えておいてください。

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