アルツハイマー病治療最前線 発症前からの薬投与で認知機能低下を抑える
次回も、アルツハイマー病治療の最前線をお届けする。
◆新薬開発の行方
世界中で注目されているアルツハイマー病新薬「レカネマブ」。早ければ年内には治療現場で使われる見通しだ。
アルツハイマー病は、「アミロイドβ蓄積・凝集→タウタンパク質蓄積・凝集→神経細胞死滅→アルツハイマー病発症」という流れを20~30年かけてたどる。従来のアルツハイマー病薬は、発症の前段階である「神経細胞死滅」後の対応を目的としたものだった。
一方、今開発・研究が行われている薬の大半は、発症に至る“上流”である「アミロイドβ蓄積」に対応。レカネマブの臨床試験では、脳内の60%のアミロイドβが減少、認知機能低下は27%抑制された。
これは、認知症症状が軽症の患者と、認知症の前段階MCI(軽度認知障害)を対象にした臨床試験の結果だが、現在、MCIより前の「プレクリニカル期」にレカネマブを投与する研究(AHEAD研究)も行われている。また、レカネマブとは別の薬、ソラネズマブ、ドナネマブでも、プレクリニカル期から投与の研究が実施されている(ソラネズマブは今年3月に結果が発表、ドナネマブは継続中)。