アルツハイマー病治療最前線 発症前からの薬投与で認知機能低下を抑える
2019年、認知症治療薬や予防薬の早期開発・実用化を目指し、岩坪教授を代表者として、国際規模のプロジェクト「J-TRC(ジェイ・トラック=https://www.j-trc.org/)」が始まった。50~85歳の認知症を発症していない人ならだれでも参加可能だ。
“認知症を発症していない”が肝で、プレクリニカル期、プロドローマル期の人も含まれる。3カ月に1度の認知機能テストで将来的にアルツハイマー病の発症リスク上昇が疑われる人には、アミロイドPETなどを実施。アルツハイマー病発症リスクが高い場合、新薬の治験に参加できる(いずれも本人の希望と承諾の上。また、各条件に該当する場合)。前述のAHEAD研究にも、J-TRCの登録者から参加している人がいる。
レカネマブがアミロイドβに対して臨床試験ではっきりと効果を示したことは、アルツハイマー病研究で大きなターニングポイントになった。
「ほかの研究にも拍車がかかっています。7月までにアメリカでFDAへの承認申請が完了したのがドナネマブ。治験では早期アルツハイマー病の認知機能低下を35%抑えたとの結果が出ています。数年後には、レカネマブのプレクリニカル期治験のAHEAD研究、そしてドナネマブのプレクリニカル期治験(トレイルブレイザーALZ)の研究結果が発表されるでしょう」