野菜だけでは栄養素が十分に吸収できない!?

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 年に一度の健康診断のたびにダイエットを固く決意、油っぽい料理を控える「油抜きダイエット」や「野菜オンリーの食生活」を実践している人も多いことだろう。ところが、そのいずれも効果があまり期待できないばかりか、場合によっては逆に太りやすくなったり、生活習慣病を引き起こすことになりかねないというからビックリだ。では、どうしたらいいのかーー。

■油は摂りすぎも摂らなすぎもよくない

 油を控え炭水化物を増やすことでカロリーを抑えるダイエット法は肥満の人が多いアメリカで1980年代に提唱され、日本でも多くの人が取り入れるようになった。

 しかし、専門家が検証した結果、こうしたダイエットを続けると糖尿病になるリスクが増え、事実2010年代には80年代に比べて糖尿病患者の数が約3倍にもなったという。というのも、炭水化物は脂肪に変わりやすいので、油を抜いて炭水化物を増やすと逆に太りやすくなってしまうからだ。管理栄養士の森由香子先生はいう。

「油は摂りすぎると肥満の原因になり、心臓病脳梗塞の他にも認知症を引き起こす動脈硬化の原因ともなります。しかし、だからといって摂らなすぎるのもいけません。油は、体のエネルギーになるなど私たちにとってなくてはならないものだからです」

■そのまま食べても吸収できない野菜の栄養素

 森先生によると、油には見逃せない効果があるのだという。それは野菜を食べる時に油を一緒に摂ると、野菜に含まれる脂溶性のビタミン群・カロテノイドの吸収率を高めてくれるのだ。

 野菜には炭水化物をエネルギーに変えるビタミンや抗酸化作用によって生活習慣病を予防してくれるカロテノイド、さらには、整腸効果を助けてくれる食物繊維など健康を維持するために欠かせない栄養素がたくさん含まれている。ところが、厚生労働省が定めている成人1日あたりの野菜摂取目標量は350gが推奨されているものの、現状は平均280g程度で不足している状態がここ10年ほど続いているのだという。

 しかも、野菜は栄養成分が細胞壁内にあるため、生で食べる場合はよく噛んだり細かく刻んだりして、細胞壁をすりつぶさなければ効率よく吸収できないという大きな欠点がある。例えばニンジンなど緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイドは特に吸収されにくく、その吸収率は10%程度ともいわれている。このことから、油と一緒に摂ることの必要性がわかる。

■ヨーグルトがカロテノイドの吸収率をアップ!

 最近、見逃せない研究結果が発表された。それは乳酸菌がヨーグルトの発酵時に作り出すEPS(菌体外多糖)という成分を多く含んだヨーグルトを野菜と一緒に摂取するとカロテノイドの吸収率が向上したというものだ。

 研究では16人に「野菜のみ」を摂取してもらった場合と「野菜とヨーグルト」を一緒に摂ってもらった場合の血中のカロテノイド濃度を計測した。その結果、ニンジンに含まれるβ‐カロテンはニンジンのみを摂取した時と比較すると1.8倍、トマトに含まれるリコピンでは6.5倍も吸収率がアップすることが分かった。さらに、ホウレンソウではヨーグルトと合わせて摂取することでカロテノイドの一種ルテインがより効果的に体内に吸収できたという結果も出ている。

 この結果を踏まえて森先生は、

「特にカロテノイドの吸収率を上げるということでヨーグルトと生野菜を組み合わせて食べるのはとてもいいですね。ダイエットにもおススメです。ヨーグルトに含まれるカルシウムと野菜の中に含まれている食物繊維は、どちらも日本人にとって不足しがちだといわれている栄養素です。しかも、ヨーグルトでカロテノイドの吸収がよくなるのですから、これはもう一石三鳥といってもいいかもしれないですね」

 とそのメリットを大いに強調する。

 普段から野菜を食べるように心がけている人こそ、意識してヨーグルトを積極的に摂るようにしたいものだ。

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