アルツハイマー病に対し現時点で使われている薬は2種類ある
先日から本欄で取り上げている新薬「レカネマブ」。この薬をはじめ、近年治験が行われている抗体医薬は、アルツハイマー病の原因物質、アミロイドβを除去する薬です。抗体医薬とは、細胞表面の目印となる抗原をピンポイントで狙い撃ちする薬のことを指します。
一方、現時点で使われている薬は、コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬の2種類があります。コリンエステラーゼ阻害薬からお話ししましょう。
認知症の薬について聞いたことがある方なら、「アリセプト」という名前に覚えがあるかもしれません。1999年に発売されたアリセプトはコリンエステラーゼ阻害薬の代表的な薬で、アリセプトは商品名、薬の一般名はドネペジルになります。
最初はアルツハイマー病の薬として発売されましたが、その後、レビー小体型認知症の進行を抑制する薬としても適応を取りました。アリセプト以外のコリンエステラーゼ阻害薬は〈表〉の通りです。
これらコリンエステラーゼ阻害薬は、脳の中のコリンエステラーゼ(主にアセチルコリンエステラーゼ)という酵素を阻害する働きをします。
脳の中には、記憶や学習において重要な働きをするアセチルコリンという神経伝達物質があります。アルツハイマー病は、アミロイドβの蓄積からタウタンパク質の変性が起こり、神経細胞が死滅する病気ですが、その過程でアセチルコリンが減少。神経と神経の情報の伝達がうまくいかないようになり、記憶障害(物忘れ)、実行機能障害(問題解決能力の低下)、見当識障害(時間や場所の見当がつかない)などの症状が現れます。
このアセチルコリンは、前出のコリンエステラーゼによって分解されます。そこで、コリンエステラーゼの働きを阻害し、脳内でアセチルコリンが減るのを防ごうというのがコリンエステラーゼ阻害薬。結果、認知症による記憶障害などの症状の進行抑制が期待できるわけです。