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荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

【リステリア症】免疫が低下している人は少量でも感染する危険あり

公開日: 更新日:

「リステリア症」は、リステリア・モノサイトゲネス(以下、リステリア)という細菌による感染症です。リステリアは河川の水や動物の腸管内などに広く存在していて、主に食品を介してヒトに感染します。

 他の一般的な食中毒菌と同様に加熱により死滅しますが、4度以下の低温や、12%食塩濃度下でも増殖できる点が特徴です。とりわけ、低温で長期間保存され、加熱しないまま食べる食品が感染の原因になることが多く、生ハムなどの食肉加工品、ミルクやチーズなど未加熱の乳製品、スモークサーモンなどの魚介類加工品が主な原因食品とされています。

 健康な成人では、多量のリステリアを摂取しなければ発症しないため、賞味期限や保存方法を守っていれば、それほど心配はいりません。しかし、妊婦、高齢者、免疫機能が低下している方は、少量でも発症し、敗血症や髄膜炎など重篤な状態を招くケースがあります。特に妊婦が感染すると、リステリアが胎盤や胎児へ感染し、流産や生まれた新生児に影響が出る場合もあり、注意が必要です。

 病院に、細菌性髄膜炎の患者さんが運ばれてきた場合、「リステリアの可能性があるかないか」で使用する抗菌薬が少し変わってきます。細菌性髄膜炎の治療で多く使用されるセフェム系抗菌薬はリステリアには無効なのです。リステリアが疑われる場合には、ペニシリン系抗菌薬が使われます。

 リステリアによる髄膜炎は、乳幼児に多いとされていますが、高齢者、副腎皮質ステロイド使用患者、糖尿病患者など免疫機能が低下している方も注意が必要です。

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