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荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

【TDM】薬剤耐性菌MRSAに対する治療では欠かせない有効な手段

公開日: 更新日:

 前回、「TDM」(Therapeutic Drug Monitoring)に薬剤師が深く関わっている、というお話をしました。今回は、広く知られている薬剤耐性菌「MRSA」の治療について、薬剤師がどのようにTDMを活用しているのかを紹介します。

 一口にMRSAといっても、人体のさまざまな場所に感染します。とびひなどの皮膚感染症から、肺炎など命に関わる病気までさまざまです。MRSAに用いる抗菌薬もさまざまあるのですが、抗MRSA薬の「バンコマイシン」や「テイコプラニン」といった薬剤では、TDMが必須になります。

 抗菌薬の量が多すぎると腎障害や聴覚障害などの副作用が心配ですし、量が少なすぎるとMRSAに対して十分な効果が得られません。また、投与量が少なく、不十分な治療が行われ続けると、新たにその抗菌薬に対する耐性菌が発生するリスクが高まります。TDMはこれらの問題に対してとても有効な手段なのです。

 抗菌薬の投与が決定すると、薬剤師は、患者さんの身長、体重、腎機能などから最適な投与量、投与回数を検討し、医師に提案します。バンコマイシンやテイコプラニンの場合には、速やかに効果を得るために初回の投与量などを多めに(ローディングドーズ)提案しています。

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