膝痛とオサラバ!治療最前線(2)痛みがほぼない超早期から「異変」が生じている
「変形性膝関節症の診断には、通常レントゲン(X線)を用います。しかしレントゲンには軟骨は写らない。そこでMRIで、痛みがほぼない超早期を含めた変形性膝関節症の患者さんの膝の状態を調べたのです」
それができたのは、順天堂大学が、文京区に住む1629人の高齢者を対象にした大規模コホート研究を実施しているから。病院に来る患者だけでは進行期の変形性膝関節症しか調べられない。
「検査の結果、半月板のすぐ下に骨棘(こつきょく)が認められました。骨棘はレントゲン画像で認められる変化で、変形性膝関節症の進行によって骨が変形して形成されると考えられてきました。しかしMRIによって、レントゲンでは見えない小さなレベルの骨棘が、歩行で痛みを感じていない人にも確認できたのです。骨棘が大きくなる過程で半月板が引っ張られて傷み、軟骨への損傷へとつながります」
半月板損傷は“スポーツやケガだけで起こる”と誤解している人が多い。確かに若い人には当てはまるものの、50代以降は変形性膝関節症が絡んでいる。
本題に戻そう。変形性膝関節症は冒頭で触れたように軟骨がすり減って起こるが、その前に半月板損傷が、さらにその前に骨棘の出現がある。変形性膝関節症を発症するかなり前から骨棘が現れている可能性があり、その病態解明が、現在の「痛みが生じてから対症療法的治療」から、「痛みが生じる前に予防的治療」への舵きりになるかもしれない。(つづく)