心臓病がメンタルヘルスに悪影響を与えるケースがある
血流の悪化が関係する
ほかにも、心血管疾患による血流の悪化が、メンタルヘルスに影響を与えるケースもあります。たとえば大動脈弁狭窄症は、その代表的なものです。血液の逆流を防止する大動脈弁が硬くなって開きにくくなる病気で、血液の流れが悪くなり重症化すると突然死するケースもあります。
心拍出量が減って脳への血液循環も悪くなるため、セロトニンなどの神経伝達物質の産生に障害が出たり、脳細胞に多くの栄養や酸素が行き渡らなくなり、萎縮して脳機能が低下し、うつ状態や意欲低下を引き起こすのです。
これは大動脈弁狭窄症の代表的な初期症状のひとつで、とにかくやる気が出ない、何をするにも面倒くさいといったうつ状態になり、仕事や家事をはじめ、自分が好きなことに対してもやる気を感じなくなります。さらには、行動が緩慢になっていって、周囲からの問いかけに対して反応が鈍くなる場合もあります。
こうしたうつ症状や意欲低下の背後に、心血管疾患が隠れているケースもあるのです。
大動脈弁狭窄症のように血流の悪化によってメンタルヘルスに障害が起こっている場合、原因になっている病気を手術などで治療すれば、精神症状は治まります。また、冒頭でお話しした病気や治療に対する不安によって生じたメンタルヘルスの症状は、病状が回復するにつれて徐々に改善していくケースがほとんどです。しかし、中にはそのまま本格的なうつ病などのメンタルヘルス疾患になってしまう人もいます。その場合、心臓のリハビリと並行して、メンタルヘルスの専門医による薬物治療や心理療法が必要になります。
心血管疾患とメンタルヘルス疾患は密接に関係していることを念頭に置きつつ、その両方に対するケアが大切なのです。