元日本記録保持者・香山進介氏 天才スイマー襲った喪失感
■「終わるに終われない気持ち」
1980年、東京・代々木オリンピックプール(現代々木第一体育館)で行われた国際水連(FINA)主催の大会に出場して、200メートルバタフライで2分04秒31の日本記録(当時)をマークした。
「競技へのモチベーションもガクッと落ちてしまい、本当ならばそれからも日本記録や世界選手権の上位を狙っていたのかもしれませんが……。しかし、辞められませんでした。当時、私は大学3年生で水泳部に所属していましたから、チームの仲間のためにも、今後の自分の就職活動、そしてこれまで積み重ねてきたもののためにも、終わるに終われない気持ちで水泳を続けました」
大学卒業後は島根県で社会科の教員となり、国体にも出場した。定年を迎えた現在も再任用されて教壇に立っている。
モスクワのプールで泳げなかった香山さんは、東京五輪開幕延期をどうみるか。
「今回は我々の時のボイコットとは違い、来年があります。この1年間は選手それぞれにとって全く違うものになります。その次の五輪を見据える若い選手もいますが、今がピークで、1年後には選考に漏れる選手もいます。私にアドバイスなどできませんが、どうかモチベーションを落とさずに励んで欲しい」
▽1959年5月23日生まれ。島根県松江市出身。尾道高校2年時にバタフライ100メートル、200メートルで76年モントリオール五輪に出場。翌年の日本選手権では、2種目を制した。法政大学3年生でモスクワ五輪代表に。卒業後は、島根県で教職に就く。