元日本記録保持者・香山進介氏 天才スイマー襲った喪失感
香山 進介さん(競泳バタフライ100m、200m)
お祝いムードの余韻が残る中、ショッキングな知らせが届いた。日本の不参加が決まった5月24日は、香山氏が21回目の誕生日を迎えた翌日だったのだ。
広島・尾道高2年時に出場したモントリオール五輪では100メートル、200メートルバタフライで、いずれも予選敗退。それから4年、21歳で体も仕上がり万全の状態で臨む覚悟だった。
文字通り脇目も振らずに打ち込んできた。それだけに、モスクワ五輪が“幻”と化した喪失感は計り知れない。
「4年間いろいろなものを我慢、犠牲にして厳しい練習をしていましたので、欠場となり呆然としました。ぶつけようのない思いもあり、むなしさというか虚脱感というか、とにかく“虚”でした」
寮生活で競技漬けの生活を送った高校時代とは環境が一変。進学した法政大では、練習を強制されたことはない。一般の学生が酒やバクチなどの遊びに夢中になっているのを尻目に、香山氏は誘惑に負けなかった。
「周りの友人がアルバイトや旅行、彼女の話をしている時は、羨ましいなと思うこともありましたね。私は土日も休むことなく練習していましたから。女性に関しても、高校時代に好きな女の子がいましたので、大学でそっちに傾くことはありませんでした。目を吊り上げながら、とにかく毎日練習ばかりですよ」