6月に筋トレで追い込む新庄に感心…声をかけると「これからTシャツの季節ですよ」と
長嶋清幸(元阪神選手、打撃、守備走塁コーチ)#2
「清宮くんとのやりとりを見て、彼らしいと思いましたね」
阪神時代の新庄剛志監督(49)とチームメートだった長嶋清幸氏(60)は、懐かしそうに言った。
■清宮への減量指令
日本ハムの秋季キャンプを視察した新庄監督は、2017年ドラフト1位の清宮幸太郎(22)の左脇腹の肉をつまみながら、こう声をかけた。
「ちょっとデブじゃね? ちょっと痩せない?」
「痩せたら打球が飛ばなくなるのが怖い」と返す清宮に、「今もそんなに打球が飛んでないよ。昔の方がもっと飛んでいた。今はちょっとキレがない気がする」と指摘したうえで、笑顔で「痩せた方がモテるよ」と囁いた。
その後、自身のSNSで、今年1月から8月にかけて鍛え上げた肉体を披露。長嶋氏が、「新庄監督は毎年6月になるとメチャクチャ、筋トレに励んでいました」と、こう続ける。
「プロ野球は2月のキャンプから始まり、そこでつくった体力の貯金は5月くらいになくなる。6月にしっかり追い込まないと、7月以降に体が持たなくなってしまいます。僕自身、カープ時代に『7月にしっかり追い込んで、もう一回体力をつけなさい』と教えられていました。公式戦をこなしつつ、しんどい思いをしながらウエートに励む姿を見て、さすがだな、大した選手だなと思いました」
そこで長嶋氏は、「ツヨシ、凄いね」と声をかけた。すると新庄監督は、きつねにつままれたような表情で、こう言ったのだという。
「カチカチにしておかなきゃ」
「長嶋サン、何を言ってるんですか。これからTシャツの季節ですよ。肌が出るでしょ? 体をカチカチにしておかなきゃダメでしょ」
長嶋氏が続ける。
「『えっ? Tシャツを着るためにやってるの?』と驚く僕に、新庄監督は『そりゃ、そうでしょう』と(笑い)。でもね、動機は不純かもしれないですけど、やっていることは理にかなっているんですよ。Tシャツを着てカッコいいくらい筋力をつければ、それが結果的に野球にプラスになる。僕はコーチ時代、選手たちによく、『動機は何であれ、プラスにつながることをやっていけばいい』という話をしました。プロたるものこうあるべき、というような堅苦しい考え方にならなかったのは、実は、新庄監督が教えてくれたことなんです」
阪神時代からチーム一の人気者だった新庄監督は、グラウンド外でも何かと話題をさらった。
「シーズンオフを経て、球場で久しぶりに会うと、すべての歯が真っ白になっていた。もともとキレイな歯をしていたんですけど、『全部インプラントです』と。90年代当時はまだ、一般的ではなかったかもしれないですけど、新しいものに関心もあったのでしょうね。あとで歯科医師に聞いたら、『体に危険ですから短期間で全部はできません』と言われて少し怖くなりました(笑い)。そういえば彼は当時、『歯医者で麻酔をしたことがない。痛みが気持ちいいんですよ』とも。普通ではない感覚を持っているのは確か。きっと相手チームも新庄野球をなかなか理解できないんじゃないかと。面白いことをやってくれそうだし、頑張ってほしいですね」
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▽長嶋清幸(ながしま・きよゆき) 1961年、静岡県生まれ。79年ドラフト外で広島に入団。中日、ロッテを経て、阪神でプレー。阪神では98年から2003年までコーチを務めた。現在は、愛知県犬山市で、「元祖台湾カレー犬山店」の店主として日々、カレーを振る舞う。