高木美帆が抵抗なく自炊を続けられた原点は「自分のことは自分でやる」
2年前のオフ、高木美帆(27)から食事面をサポートする明治の管理栄養士・村野あずさ氏(49)のもとに届いたのは、自分の作る料理のレパートリーが書かれたメニューリストだった。それらをどう組み合わせればバランスの良い食事がとれるかという相談だった。
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「自炊生活がマンネリ化してきた中で、今できていることとできていないことを整理し、そこからさらに栄養面の強化をはかるためにはどうすればよいか、ということを考えていきました。1日3食自炊するのは普通の人でも大変ですが、高木選手は午前、午後、1日2回の練習の合間にアスリートとしての栄養を考えながら自炊をしています。自炊に時間をかけ過ぎたり、ストレスになって継続できなくなってしまっては意味がないので、時短を考えて時間があるときにおかずの作り置きをするなどの提案もしました。また、血液の酸素運搬に関わるヘモグロビンの数値が下がらないようにするために、タンパク質や鉄分の強化が必要なのですが、そのために自分でレバーの下処理をして……というのはややハードルが高い。そこで、高木選手の行きつけのお店に鉄分強化の食事をお願いしたり、私たちも協力させてもらって『こういう食材を多く使ったメニューをお願いします』とお手紙を書いてお願いしたこともありました」
村野氏は高木のサポートを始めた時期から、その意識の高さに驚いたという。
「こう思いますがどうでしょうか?」
「高木選手は、何か相談事があるときに、『どうしたらよいですか』とすぐに答えや案を求めるのではなく、『こうしてみようと思うのですがどう思いますか?』とまずは自分の考えや課題をしっかり整理した上で助言を求めてきます。日ごろから他人に依存しすぎず、常に自分自身でいろいろなことを考え前向きに取り組める選手です」
抵抗なく自炊を続けられた原点は、高木家の「自分のことは自分でやる」という教育方針にある。中学生になると、母・美佐子さんから「自分のお弁当は自分で作りなさい」と言われ、自炊は生活の一部に。
「料理のレパートリーも徐々に増え、以前はやらなかった煮魚を作るようになったり、どんな調理器具がいいかという話になることも。栄養、時短、節約を考えて私が使っている無水調理鍋を高木選手におすすめしたところすぐに購入。無水調理鍋は素材自体に含まれている水分だけでおいしい料理が手軽にできますし、余分な水を加えない分、加熱時間が短くなって時短になる。密閉性が高く、素材の栄養を逃さずに済むため栄養強化にもつながります。高木選手も料理の工程が減ってうれしい、と今や使いこなし、料理をする楽しみも増えているようです」
スケート技術だけでなく、料理の腕前もうなぎ上りのようだ。(おわり)