「北京で納豆を手に入れられるのか」高木美帆は食の管理にも余念がない
スピードスケート高木美帆(27)を食事面から支える明治の管理栄養士、村野あずさ氏(49)。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、制約の多い北京五輪では、ある食材の存在が気がかりだったという。
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「普段の食事はもちろん、海外遠征時でも必ず納豆を味方につけて戦う高木選手だけあって、『北京で納豆を手に入れられるのか』というのは不安材料でした。納豆を今大会用に持ち込めたとしても、約3週間の遠征では持ち込む量の制限や賞味期限の問題が生じます。なので選手村の近くで日本メーカーの納豆が買えるお店はないか事前にリサーチをしました」
結局、JOCの配慮で選手村内で食べられることが分かりひと安心したというが、「あらゆるリスクを想定して前もって準備に余念がないところや、これまでも過酷な環境の中でさまざまな経験を積まれていることもあって、少しのことでは動揺しないような強さがある」と話す。
ストレスのため平昌で減った食事量
コロナ禍でなくとも、異国の地では食事で苦労する選手が少なくない。高木の場合、若い時期から海外経験が豊富だったことも大きなアドバンテージになった。そんな鉄人は開催中の北京五輪で前人未到の5種目、最大7レースに出場する。短距離と長距離では使うエネルギー量や筋肉も違うため、栄養面でも幅広いサポートが必要になる。
「平昌五輪のときは調整期間中こそしっかり食べられていたんですが、試合が始まってくると、ストレスや緊張、疲労による胃腸の消化機能も落ちて食事量が減りました。試合がナイター中心で、ドーピング検査や取材を終えると夕食が深夜に及ぶこともあった。レース後こそしっかり食べてほしいのですが、実際は深夜の食事となると翌日に影響しないような配慮も必要です。そういった大会スケジュールを考慮した中では、食事以外の補食やサプリメントを上手に活用し、レース直後のリカバリーがいつも以上に重要になってきます。高木選手はそのあたりの戦略もしっかり事前に準備をして平昌でも戦い抜きました。今回も平昌と似たような状況になるので、試合前のエネルギー補給の徹底や試合後のプロテインもタンパク質をより強化できるものを摂取するよう事前に確認を行いました」
■「チョコレートが止まりません」
長期の海外遠征や合宿が続くと、変わらない環境や食生活にストレスを感じる場合もある。
「疲れてくると甘いものを食べたいという欲求が増していきます。もちろん、食べることを禁止はしませんし、高木選手からも普段から食事以外の補食やおやつの写真や記録が送られてきます。練習が思うようにこなせない時期にはストレスによって甘いものを自制するのが難しい時期もあった。そんなときも『チョコレートが止まりません』とか、『甘いものを食べたい欲が増しています』と、オープンに報告してくれるのでアドバイスもしやすく、そうやってリフレッシュやセルフコントロールにつなげているのだと思います」
高木美帆も人間、ということだ。常に高いモチベーションをキープするのは容易ではない。時にはモチベーションが低下することもあるだろう。こまめに連絡を取っていることで、その小さな気持ちの変化や心の揺れも感じ取ることができるという。
北京五輪を2年後に控えたシーズンオフ、高木からあるものが送られてきた。 =つづく