著者のコラム一覧
武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

世界陸上でクラスター発生…「スポーツ産業国」である日本の驕りが希薄な危機感を生む

公開日: 更新日:

 感染チェックにはPCR検査の他に、その場で結果が出る簡易な抗原検査がある。派遣に際し各自に10回分の簡易抗原検査キットを配り定期的にチェックした国もある。日本は入国後にこうしたチェックをしなかったため、接触機会の多い役員、コーチを中心にクラスターが発生したのだろう。危機感の希薄と言わざるを得ない。

■日本はまだまだスポーツ大国ではない

 1984年のロサンゼルス五輪を思い出した。開幕後に、バレーボール代表から大会第1号のドーピング違反が出た。漢方薬に禁止薬物が含まれていたという説明で、改めて選手、関係者に薬箱を提出させると、続々と禁止薬物が見つかり大騒ぎになった。日本はモスクワをボイコットしたこともあり、スポーツの商業化、世界の急激な変化を実感できていなかったのだ。危機感の希薄は極東に位置する国の宿命かも知れない。構造的な問題もあるのではないか。

 世界選手権は、参加することに意義を見いだすオリンピックと異なる純粋な競技会で、自己記録を目指す舞台ではない。最大限の挑戦をして臨む舞台だ。日本陸連は、ポイント制が採用になれば国内でもポイントが取れるとか、マラソンはMGCで国内大会に封じ込めるなど、選手の恒常的な海外挑戦を抑制し、いきなり大舞台に送り込んでいる。代表になれば所属企業も母校も喜び、支援コーチは増え、その挙げ句が……。評価軸を高くして代表派遣をさらに厳選すべきだろう。

 大会中に3年後の東京開催が決まった。日本はまだまだスポーツ大国ではなく、スポーツ産業国なのだ。この現実を謙虚にわきまえて平時の海外挑戦を積まない限り、今回の轍は繰り返される。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    相撲協会の逆鱗に触れた白鵬のメディア工作…イジメ黙認と隠蔽、変わらぬ傲慢ぶりの波紋と今後

  2. 2

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    《2025年に日本を出ます》…團十郎&占い師「突然ですが占ってもいいですか?」で"意味深トーク"の後味の悪さ

  5. 5

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  1. 6

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  2. 7

    結局《何をやってもキムタク》が功を奏した? 中居正広の騒動で最後に笑いそうな木村拓哉と工藤静香

  3. 8

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 9

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 10

    高校サッカーV前橋育英からJ入りゼロのなぜ? 英プレミアの三笘薫が優良モデルケース