病魔と闘い、昭和の終わりとともに去った美空ひばり
<1989年6月>
戦後の歌謡界を代表する歌手といえば美空ひばり。49年に11歳で本格デビューして以来、500曲を超えるオリジナル曲をレコーディングした不世出の歌姫だ。
しかし、弟2人を相次いで亡くしてからは酒量が増えていき、体調不良も続き、85年ごろからは腰痛を訴えるようにもなった。そして体が悲鳴を上げたのが87年4月。全国ツアーの公演先の福岡市で緊急入院する。医師団からは「左右大腿骨骨頭壊死(えし)・慢性肝臓病・脾臓(ひぞう)肥大」と発表され、そのまま3カ月あまりの入院。明治座などで予定されていた公演は中止。50歳の誕生日を病院のベッドで迎えた。
一時はカムバックも危ぶまれる状況。だが、年末には京都のイベントでステージ復帰し、翌88年4月、完成直後の東京ドームで復活公演を成功させて注目を集めた。
だが、同年11月ごろから「胸が苦しい」と訴えるようになる。元号が平成に変わった89年2月6日、福岡を皮切りに全国28カ所でのツアーをスタートさせたが、翌日の小倉公演は主治医が付き添い、ステージ上では大半を椅子に座って歌う異例の事態となった。