「明日ママ」騒動 「現段階での放送中止には疑問」と識者
期せずして、この冬最大の話題作になってしまった「明日、ママがいない」(日本テレビ系)。初回放送直後に熊本県の病院などが放送中止や内容改善を要求したことに始まり、批判や非難の拡大、スポンサーのCM自粛と騒動は現在も進行中だ。
まず、当たり前だが、これがドラマでありフィクションであることを再確認したい。その上で、このドラマは子どもから見た親を描きつつ、一般的に“弱者”と思われがちな子どもの強さも描いている。また経済的事情から虐待まで、さまざまな理由で自分の親に養育してもらえない子どもたちの問題を提起していることも事実だ。芦田愛菜(写真)をはじめ、子役たちの圧倒的な演技力も評価できる。
もちろん、主人公に「赤ちゃんポスト」からとった「ポスト」というニックネームを付けるなど、当事者も含む視聴者に対する想像力と思慮に欠けていたことは否めない。これまでもエグい物語展開や人物設定で名を馳せてきた野島伸司を脚本監修に置いたことで、「クレーム上等!」くらいに思っていたのかもしれないが、同じ野島の「家なき子」の時代と今では社会の環境や意識が大きく変わっている。それはスポンサー企業も同様だ。
とはいえ物語の全体像が見えていない現段階で放送を中止することがいいとは思えない。日テレの判断と対応、BPO(放送倫理・番組向上機構)の見解にも注目したい。
(上智大教授・碓井広義=メディア論)