<第21回>高倉健に少しも臆していない菅原文太の芝居
1972年に公開されたアメリカ映画「ゴッドファーザー」とその影響を受けた翌年公開の「仁義なき戦い」。この2本の影響は大きい。暴力組織の体質をリアルに、克明に描いた映画はそれまでのギャング映画を絵空事にしてしまった。
「ゴッドファーザー」「仁義なき戦い」を見てしまうと、「大脱獄」に出てくるやくざやチンピラの姿、アクションがいかにも空々しく感じてしまうのである。
当時、高倉健が出ていた任侠映画、ギャング映画はそれでもまだ客にアピールしていたけれど、そのまま続けていたら、次第に飽きられてしまったのは自明だった。東映をやめて、「幸福の黄色いハンカチ」「八甲田山」の路線へ行ったのは大きな決断だったけれど、結果的には幸いだったと思われる。
高倉健自身は「映画は娯楽」とはっきり割り切っていた。
本人は、こう語っていた。
「映画はね、あくまでエンターテインメントだと思う。映画を見て学識が豊かになるとか何かを教わるとかは、僕はないと思う。ただ、ボディーは打つね。見る人の心に響くものを届けることはできる。