慢心見抜き助言も 宍戸開が語る故・地井武男さんの人柄
「開、おまえ、俺の言葉、聞いてるか」
「え?」……。一瞬、戸惑ったものの、真意はピンときました。僕は若い刑事役だから、台本通りにセリフを言って、カッコ良く写ろうって、それだけを浅はかに考えていたんですね。
芝居はいくらセリフが決められていても、相手から振られたらちゃんと聞いて返す、言葉のキャッチボールが大事。さらにキャストのチームワークも。「セリフもアクションもハートが必要」とズバリ指摘してくださったんです。
それ以来、「刑事貴族」が終わるまで、地井さんとずっと一緒。何より演技を間近に見ることができたのは大きな財産になりました。
名脇役は出しゃばらず、かといって、その人ならではの個性や存在感がキラリと光るもの。また、ご自身が主役の時は役柄に応じた自己主張をちりばめる。
地井さんはそのサジ加減が実にうまい。自然体で身についてらっしゃるんです。例えるならシューマイ弁当のカラシ。弁当全体が引き締まるでしょ?
しかも、ちゃめっ気があって温厚でオシャレ。いつもニコニコしてらっしゃるから現場がとても和やかでした。亡くなられて4年。今でも憧れであり、目標とする役者さんです。