「成長できた」将棋・三浦弘行九段が振り返るスマホ騒動
丸山さんだけではありません。第三者委員会の結果が出る前から「無実だ」とわがことのように怒ってくれた人の存在がありがたかった。女性の方が多かった気がしますが、こう言うと非科学的かもしれませんが、感覚に優れた女性は、直感的に“おかしい”と感じてくれたのかもしれません。私のファンでも何でもない女性の「三浦さんが不正をしていたとは思えない」という声をたくさん聞けたことが、本当にうれしかった。
今回の騒動では妻や幼いわが子にも迷惑をかけました。なにしろ、無実を証明するため自ら携帯電話やパソコンを調査委に提供しましたが、その中には妻の携帯電話や私用パソコンも含まれています。子供の検査入院や、週刊誌の記者が妻の実家にまで来たりしたので、当時は外出するのも難しく、余計に妻には気を使わせたかもしれません。
■以前とまったく同じとはいかない
時が経てば、こういうのは徐々に風化していくのでしょう。ただ、「結果を出して、疑惑前と同じ実力を証明するしかない」とは今すぐには確信を持って言い切れない心境ではあります。私の潔白が証明されても、以前と同じ環境かというと、それは違います。復帰後の対局は私の希望で毎回、金属探知検査を実施してもらっていますが、そこまでやっていただいても、対局中の持ち時間に離席しづらいのも事実。棋士によって対局中の行動は異なりますが、私はずっと座っているのが苦手で、動きながら考えることがあります。そういう意味で、以前とまったく同じリズムで将棋が指せているのかというと、違う気もします。