著者のコラム一覧
山田勝仁演劇ジャーナリスト

浅利演出事務所「李香蘭」 時代経てさらに深化した反戦劇

公開日: 更新日:

 浅利慶太演出の劇団四季オリジナルミュージカルとして1991年に初演されて以来、今回の公演で900回に迫るという人気作だが、27年という時間は「平和国家日本」の様相をガラリと一変させてしまった。そのため、作品を貫く「反戦」という一本の芯が改めて浮き彫りにされた。

 1946年、上海軍事裁判所。ひとりの女が引き出される。歌手・女優の李香蘭(野村玲子)だ。日本の国策映画に数多く出演したことから、祖国・中国を裏切った漢奸(反逆者)の罪に問われたのだ。しかし、彼女は告白する。「私は日本人。名は山口淑子です」と……。

 戦争によって翻弄された李香蘭の数奇な半生。その狂言回し役として登場するのは、後に漢奸として処刑される男装の麗人・川島芳子(坂本里咲)。

 舞台は李香蘭の生い立ちから、スターとしてもてはやされ、「漢奸」として裁かれるクライマックスまでを描いていく。

 親中国派である父、満州国建設の旗印となった五族協和の理念を信じる杉本(近藤真行)への思慕、そして姉のような李愛蓮(樋口麻美)に育まれる李香蘭……。しかし、将校による犬養首相暗殺、高橋是清大蔵大臣殺害と、軍閥は侵略戦争に突き進んでいく。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    松本人志「事実無根」から一転、提訴取り下げの背景…黒塗りされた“大物タレント”を守るため?

  2. 2

    島田洋七が松本人志復帰説を一蹴…「視聴者は笑えない」「“天才”と周囲が持ち上げすぎ」と苦言

  3. 3

    人気作の続編「民王R」「トラベルナース」が明暗を分けたワケ…テレ朝の“続編戦略”は1勝1敗

  4. 4

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  5. 5

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  1. 6

    松本人志が文春訴訟取り下げで失った「大切なもの」…焦点は復帰時期や謝罪会見ではない

  2. 7

    窪田正孝の人気を食っちゃった? NHK「宙わたる教室」金髪の小林虎之介が《心に刺さる》ファン増殖中

  3. 8

    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

  4. 9

    菊川怜が選んだのはトロフィーワイフより母親…離婚で玉の輿7年半にピリオド、芸能界に返り咲き

  5. 10

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇