水道橋博士<前編>小声で「オフィス北野に深刻な問題が…」
「今、オフィス北野には深刻な問題があります。たけしさんと森社長の間の亀裂ですが、無論、内部で解決したいですが、もしもの場合、危機回避すべきです……これ以上言えません。まだ極秘です。○○君(新マネジャー)にも」
と言って両手の人さし指の先を擦り合せる……2人の間に“深刻な摩擦”があるということだ。この25年弱、テレビプロデューサーとしてたけしさんとも森社長とも仕事で密な関係を築いてきただけに呆然としてしまった。マネジャーがトイレから戻ってくると、博士も私も、何もなかったように別の話に切り替えた。4時間も濃密な時間を過ごした我々は「またやりましょう」と握手し、六本木を後にした。私は帰宅する深夜タクシーの中でまだ興奮状態にあった。話したのは口の堅い私の嫁1人。業界・メディア関係者には1人も話さなかった。
しかし、それは私が想像していたよりもはるかに早く来た。サシ飲みした1カ月ほど後、スポーツ新聞にデカデカと「たけし、オフィス北野独立」と出た。私はたけしさんの話がたくさん出てくる新書を一冊執筆していたので、出版社から「吉川さんの連絡先を知りたいという問い合わせが弊社にいっぱい来ていますが、こちらは教えませんが妙な電話には出ないで下さい」との知らせが来た。このニュースは日本中を駆け巡り、その後ご存じのような展開になった。事が公になった初期の頃、私は博士にメールを送り「博士はどっち?」とだけ聞いてみた。
「僕はオフィス北野です」