人気書評家が“診断” 乃木坂46メンバー初小説その実力は?
2018年の写真集ランキングを席巻したアイドルグループといえば「乃木坂46」だが、所属メンバーのひとりが、年の瀬に来て文芸界を賑わせている。高山一実(24)の初小説作品「トラペジウム」(KADOKAWA)がそれだ。月刊誌での連載を大幅に加筆修正して先月末に刊行し、オリコン週間BOOKランキングの文芸書ジャンルで首位を獲得(12月10日付)。多くの乃木坂ファンから支持を得たのだろうが、肝心の力量は? 文芸評論家の杉江松恋氏が読みどころと改善点を解説する。
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現役アイドルがアイドル志望の少女を主人公にして小説を書く。
これはかなり危険な賭けである。主人公に作者を重ね合わせて読む人間が必ずいるからだ。書きようによっては、作者自身が嫌われかねない。
そんな危険に挑んだというだけでも、高山一実のデビュー作「トラペジウム」は評価すべきである。しかも、けっこうな荒業を使って同一視問題を回避している。
どうやったか。主人公をとんでもなく自己中心的な人間にしたのである。きついデフォルメが施された、物語内だけにしかいないような人間に。