窪田&柚希コンビの圧倒的存在感で魅了「唐版 風の又三郎」
1974年に唐十郎作・演出・出演により状況劇場が初演した作品。今回の演出は唐十郎の愛弟子である金守珍(劇団新宿梁山泊)。主演はテレビ、映画で活躍中の人気俳優・窪田正孝と元宝塚トップスターの柚希礼音。
宮沢賢治の愛読者であり、精神を病む青年・織部(窪田)と場末のホステス、エリカ(柚希)。2人は東京の下町で出会う。エリカの中に、自分をどこかへ連れ去ってくれる「風の又三郎」を幻視する織部。一方、エリカは自衛隊の練習機を乗り逃げし行方不明となった恋人・高田三曹(丸山智己)を捜すため織部を利用し、死の魔窟へと向かうが……。
宮沢賢治、ギリシャ神話、シェークスピアなどをモチーフに、妄想、幻想とロマンチシズムがない交ぜになった劇世界。おもちゃ箱をひっくり返したようなおびただしいイメージの洪水はまさに唐ワールドだ。
唐作品を知り尽くした金演出による俳優たちの“身体性ある演技”が素晴らしい。
窪田はガラスのようにはかない織部の純粋さ繊細な心象を生き生きと演じ、圧倒的な存在感を見せつけた。