峰打ちの殺陣ではスペースを使い動作を大きく見せる工夫を
「暴れん坊将軍の殺陣は刀を逆反りにした峰打ちなので、刀を止めるのが難しかった。斬る場合は体が流れていいのですが、しっかりと体重をかけて叩くというような動作をします。ですが、それだと、立ち回りとしては派手さに欠けるため、舞台の端から端まで走り回って、動作を大きく見せるような工夫をしていました。殺陣の場合は監督ではなく、殺陣師の先生が仕切るのですが、スピード感やリズム感を大事にしていたものです」
それと同時に決めポーズで見せる“目ヂカラ”も重要。勝新と同様、松平が「気になる」というアル・パチーノも目だけで演技ができる役者だ。 では、松平はこれまで演じてきた数多くの役柄の中で、どれを一番気に入っているのか?
「本当にいろんな役柄を演じました。NHKの大河ドラマだけでも、大きいところでは『草燃える』(79年)の北条義時(鎌倉幕府の2代執権)、『利家とまつ』(2002年)では柴田勝家、『義経』(05年)は武蔵坊弁慶、『おんな城主 直虎』(17年)では武田信玄をやりました。どれも役者なら一度はやりたい役ばかりですが、私としては1991年にテレビ朝日で放送された『戦国乱世の暴れん坊 斎藤道三 怒濤の天下取り』の斎藤道三が一番楽しかった。油商人から身を起こし、戦国大名まで上り詰める彼の一生に近い部分を描いたので、役柄に入り込むことができた。もちろん、徳川吉宗は別格ですが」