ご恩返しと償い…私の夢はもう一度、日本に戻って歌うこと
私にとって日本人以外の歌手で記憶に残っているのが、台湾の歌手テレサ・テンさんです。彼女は“アジアの歌姫”と呼ばれていました。91年末の紅白歌合戦では一緒に出場しました。私は「悲しみの訪問者」、テレサさんは「時の流れに身をまかせ」を歌いました。残念ながらテレサさんは95年、タイで亡くなりました。42歳の若さでした。
96年に個人事務所をつくった理由も、“アジアン・フューチャー”(アジアの未来)をテーマに日本だけでなく、アジアでも愛される歌手になりたいという目標を立てたからです。そのために完璧なステージを目指し、人一倍豪華な照明や舞台装置をつくろうとしました。有能なバックバンドを起用したり、他の歌手以上に衣装をたくさん購入したり、お金をかけました。ステージ(コンサート)では満足できましたが、経済的に独立事務所を圧迫する結果を招いたのです。
日本ではいろいろと苦労しましたが、やりがいも多かった。それもファンのおかげです。これまで波瀾万丈の人生を生きてきて、ファンの皆さまにも大きなご迷惑と心配をかけてきましたが、今の私には過去を振り向いている時間はありません。皆さんに対するご恩返しと償いの意味で歌うしかありません。