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ラリー遠田お笑い評論家

1979年、愛知県名古屋市生まれ。東大文学部卒。テレビ番組制作会社勤務を経てフリーライターに。現在は、お笑い評論家として取材、執筆、イベント主催、メディア出演。近著に「お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで」(光文社新書)などがある。

M-1に強烈な爪痕残した ぺこぱ“掟破りの優しいツッコミ”

公開日: 更新日:

 ミルクボーイが優勝した昨年末の「M―1グランプリ」で、彼らと同じくらい強烈な印象を残したのが「ぺこぱ」である。彼らはファイナリストの中で最後に登場して、決勝常連組の和牛を振り切り、最終決戦にコマを進めた。3位という結果に終わったものの、その革新的な漫才スタイルは世間に衝撃を与えた。

 明るい表情のシュウペイ(32)がボケを担当し、派手な髪形とメークに加えてキザな話し方や動きにもやたらとクセがある松陰寺太勇(36)がツッコミを担当する。

 本来、ツッコミとは常識を盾にしてボケの言動を訂正するものなのだが、松陰寺はシュウペイを否定せず、そこに理解を示すのだ。

 タクシー運転手を演じるシュウペイが道端で手を挙げている松陰寺を車ではねると、松陰寺は「いや、痛えな、どこ見て運転してんだよ……って言えてる時点で無事でよかった」と言う。さらに、続けてもう一度ぶつかったときにも「いや、2回もぶつかる……ってことは俺が車道側に立っていたのかもしれない」と言う。

 ツッコむと見せかけてツッコまない。松陰寺の「優しいツッコミ」は、漫才の常識を覆す画期的なものだった。この変則的な漫才が高く評価された理由のひとつは、10番目という順番が良かったからだろう。観客がいろいろなタイプの漫才を一通り味わった後だったからこそ、掟破りの優しいツッコミがこの上なく斬新に見えたのだ。

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