時代考証から見るとNHK大河「麒麟がくる」は十分楽しめる
逆に、さすがNHK大河、しっかり時代考証をやっていると納得させられるのはこんなシーンだ。道三の娘の帰蝶も光秀の母も、立て膝で座っている。女性が行儀悪いように見えるが、正座は江戸期からの座り方で、戦国時代は男も女もあぐらか片膝立て座りだったのだ。
織田信秀は双六に興じながらマクワウリをかじる。マクワウリは美濃国真桑村のものがとくに美味といわれ、道三が気づかぬうちに、信秀は美濃の奥深くまで手を突っ込んでいたことを暗示する演出だった。領内の田で代かきを手伝う光秀が、へっぴり腰で鍬を振っているように見えたが、鍬はツルハシのように上から振り下ろすものではなく、土寄せや畝立ての農具なので、腰の高さで使うのだという。つまり、“へっぴり腰”が正しかった。
以上、すべてNHKの時代考証業務担当のシニアディレクター大森洋平氏の著書「考証要集」「考証要集2」からの受け売りです。これをわきに置いて、突っ込みを入れたり感心したりしながら「麒麟がくる」を楽しむのも、面白いかもしれない。目からうろこが落ちるはずである。あっ、目からうろこも戦国時代劇ではNG。新約聖書の言葉だそうだ。
(コラムニスト・海原かみな)