「沢口靖子です」で15年 メルヘン須長さんの白衣下は古着
新型コロナの影響で無観客で行われた3月の「R―1ぐらんぷり2020」。唯一の女芸人として「科捜研の女」の沢口靖子に扮したネタで話題になったメルヘン須長さん(34)はケチケチ生活を続けながら、「似てる」の一言から始めた沢口マネを時間をかけて極めていった!
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34歳の今までずっと埼玉の実家暮らしなので、食べるのに困ったことはないけど、お金は絶えずなかったです。
バイトはいつオーディションやライブ、芸人の仕事が入ってもいいようにビラ配りなど派遣の仕事をやってました。
■川越からの交通費が1700円、ノルマは自腹
東京なら芸人ばかりが勤める飲食店があり、急に休む時に他の芸人にシフトに入ってもらえるけど、埼玉だと休みたい時に休めるバイトが派遣しかなくて。
でも、入りたい日に仕事があるわけでもなく、月に4万~5万円しか稼げなかった。
家が川越の先なのでライブなどで都心へ行き来する交通費が1700円くらい。しかも、私はライブでは見にきてくれるお客を呼べず、自腹でノルマを払って出演してました。
アニメのモノマネをしていた若い頃はテレビの露出は年2回くらい。アニメは著作権がネックでしたし、私の場合はキャラがブラックな会話をするネタだったから、スタッフさんも使いづらいと思っていたみたい。
たとえば、ちびまる子ちゃんとサザエさんのキャラが喫煙所でたばこを吸いながら、ギャラの愚痴を話すとか(笑い)。ライブでは結構ウケるけど、テレビではやれない状態が10年近く続きました。
その間、服は地元のリサイクルショップの何百円かで買える、臭い毛玉が付いてるような古着しか買ってません。衣装もその店で揃えてました。
美容院にも行けずに自分で後ろ髪まで切っていた時期もあります。ちびまる子ちゃんのマネをした時は自分で切った髪なので、ザクザクしてました。化粧品も百均の物ばっかり。
靴は2000円の新品を買いますが、履き続けて裏がベリッと剥がれちゃうと、接着剤でどうにかもたせてました。見た目には本当に節約してましたね。
ある時、先輩芸人に「沢口靖子に似てるよねぇ」と言われて、「私がそんなわけない!」とスルーしてたけど、あるオーディションで試しに声マネだけで「沢口靖子です!」とやってみたんです。そしたら、審査員がドッと笑って沸いてくれて。
見た目を似せてライブでもやったら、笑いが起きたんですよ!
「沢口靖子です!」の第一声で。それが15年。
R―1に出たけどコロナで貧乏に戻りそう
その後は研究を重ねて沢口さんの声や髪形やメークを何年もかけて仕上げ、今年やっと「R―1ぐらんぷり2020」の決勝に出られました。両親はいつも「やりたいことをやりなさい」と応援してくれていたので、すごく喜んでくれた。最近はテレビで沢口靖子さん以外に、アニメのマネもやらせてもらえてます。もちろんブラックネタはやってません(笑い)。
「R―1の決勝に出たら営業増えるよー」と周りから言われていた通り仕事は入って、生活は少~しだけ変わりました。数年前に派遣を辞めて、ショーパブで働いてましたが、出演する回数もギャラも増えて、やっと普通のフリーターくらいにはなれました。なのに、コロナの影響でショーパブが休みになっちゃったし、他の仕事も減り、小貧乏からまた貧乏に戻りそうで怖いです。
このご時世、私の周りの芸人が動画配信アプリをこぞって始めているんです。私も生配信を始めたので、しばらくは動画をお笑いライブのかわりとして、やっていこうと思ってます。
沢口さんのマネの時に白衣の下に着てるのは200~300円の古着の時もあるので、もっと頑張らないと!
(聞き手=松野大介)
▽本名=須長恵利(すなが・えり) 1986年1月、埼玉県生まれ。2008年からメルヘン須長としてピン芸人活動を開始。「R-1ぐらんぷり2020」(フジテレビ系)で沢口靖子のマネで話題に。