コロナ禍こそ必見 映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」
一律10万円の特別定額給付金が決定されてからはや1カ月以上。緊急事態宣言も解除されたというのにいまだ申請用紙すら届かない。そんな対応の遅れが批判され、支持率も急落する安倍政権だが、そもそも当初は国民の8割を門前払いする「一部世帯のみ30万円給付」ですまそうとしていた。こうした「出し渋り」体質の弊害を、グローバリズムと緊縮政策で日本の先を行くといわれる英国の映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」(16年、英ほか)は正確に言い当てていたという。映画批評家の前田有一氏はこう解説する。
「主人公は40年間も真面目に働き、社会に貢献してきた大工です。そんな彼が突然の病で働けなくなり、一時的に福祉の助けを求めますが、行政側は複雑なオンライン申請を強要するなど、あの手この手で給付を諦めさせようとします。常に後手後手で、国民にカネを出すことにかけては渋りまくる日本の現在の姿は、この映画と見事にダブります」
■国の無策に翻弄される労働者たち
監督は「家族を想うとき」(19年)などで知られる社会派映画の名匠ケン・ローチ。英国の社会福祉制度と現場を徹底リサーチして反映させたオリジナル脚本は高く評価され、自身2度目となるカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を受賞した。