安西マリア「愛の逃避行」を追ってマスコミはカーチェイス
親交のあった東映俳優・安藤昇を思い出した。安藤氏も渋谷の「安藤組」を率いた元ヤクザの親分だ。お酒を飲みながら目の話を聞いたことがある。
「ヤクザの世界は目が最初の武器。最初に睨みつけて相手を威圧するかどうかで勝負は決まってしまう」と言っていたのを。T氏の目を見て思い出した。
T社長は野太い声で安西を「許さん」とほえた。社長の話が独り歩きすれば、安西は非難の矢面。客観的に見ても失踪は芸能界のご法度だが、突如、安西の母親が「娘は社長から暴行、強要を受けた」と提訴してきた。急転直下、「愛の逃避行」は「恐喝事件」の展開になった。
メディアにも緊張が走る。安西出廷の日の東京地裁前は大混乱となった。法廷終了後の安西を追うメディアの車がズラリとスタンバイ。待たせていた安西の車が走り出すと、その後をメディアの車が続いた。
映画のワンシーンのような光景だった。3番目ぐらいまでがベストポジションだが、こればかりはドライバーの腕で、私は5番目だった。先頭につけたのは、混乱する現場では絶対的な強さを発揮する梨元勝リポーターの車だった。「やられた」と思っていたが、皮肉なことに先頭だったことで悲劇が起きた。