超テキトーな弟子だった俺は談志師匠にも口から出まかせ
「何? 俺のファン? なんで番号が……」「そーですよね、失礼ですよね、勝手に番号を調べたんですかね?(汗)とにかく、もうかけないように言いますので」と、どーにかその場を切り抜けようとしたが……この「が」がまたもや俺を血液凍結地獄へと突き落とそうとしたのだった。師匠は俺の言葉に予想だにしなかったことを言い出したのである。「ふ~ん、女のファン? ふ、ふ、面白えじゃね~か」と受話器を自分に渡せのしぐさをするじゃないのさ……ウソだろう~! あ~全部がバレる~!! と心の中で悲痛な叫びをあげながらも、「窮鼠猫を噛む」? 最後のあがきで電話の向こう側の女の子に師匠に合わせる演技の会話をしてくれ~と願い、受話器を渡すまでのわずかな時間に「師匠のファンですから!!」「変な人ってこともありますから短く切った方がいいと思います」と声を大きめにしたのだった。
さて、その結末は……というと、なんと女の子がそこそこ落語のことを知っていたことも幸いし、電話を切った師匠は「う~む、なかなか若いのに感じがよかったぞ」と妙なニヤケ顔を見せたのだった。ふ~っ、九死に一生を得た~と、もちろん俺は師匠がリビングから出ていった途端に、コンニャクのごときにフニャフニャとへたり込んだのでした。