CD未発売で異例の紅白初出場 YOASOBIと太宰治に通じる世界観
YOASOBIは「小説を音楽にするユニット」という、ありそうでなかったコンセプトを元に生まれた音楽ユニット。ソニー・ミュージックエンタテインメントが運営する小説・イラスト投稿サイト「monogatary.com」で行なわれたコンテスト「モノコン2019」で大賞に選ばれた小説「タナトスの誘惑」を楽曲化するユニットとして結成された。
「タナトスの誘惑」は、死への渇望に取り憑かれている彼女と、その彼女に恋をし、それを止めようとする僕の物語。しかしその僕も次第に、彼女の求める愛に応えようとし、最終的には二人で「夜に死へと駆け出す」というセンセーショナルな内容となっている。
まるで、太宰治の「人間失格」のような儚さと美しさの先のゾッとする不気味さも包括している世界観。「死」というものをテーマに描いた作品は、どうしてもそのテーマの重さに引っ張られるようにシリアスで重々しいサウンドになりがちだ。
しかし「夜に駆ける」は、そうではない。サウンドだけでいえば、「生」を感じさせるキャッチーな明るさがあり、これがまさか「死への渇望」を歌った歌だと気づくのは至難の技だろう。いい意味で、詞の世界観と曲の雰囲気がマッチしていないのだ。