児島美ゆきさん「真夏の果実」は女優として自問自答していた時に出合った

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児島美ゆきさん(女優/69歳)

 1970年初頭にテレビ東京が放送した「ハレンチ学園」の十兵衛を演じ、若々しい色気で日本中の青少年を悩殺。81年秋から翌年春までフジテレビが放送した「北の国から」では田中邦衛(享年88)演じる黒板五郎と恋仲になるホステス「こごみ」を演じて大人の色香をふりまいた。

 芸能界入りは東映児童演劇研修所で学んだのがきっかけ。14歳でコーラスグループ「ヤング・フレッシュ」に加わり、「仮面の忍者 赤影」「ひょっこりひょうたん島」など人気番組のテーマ曲を歌った。今も女優として活動を続けながら、近年は都内のライブハウスを中心にライブ活動も行っている。表現者・児島美ゆきに大きな影響を与えたのは、まったく毛色の異なる<珠玉の2曲>だった。

  ◇  ◇  ◇

 気恥ずかしい話ですけど……シングルを5枚、あとベストアルバムも出しています。もちろん本職の歌手ではないし、誰もが褒めてくれるような上手な歌い手でもありません。でも、素晴らしい曲を人前で歌うことは好きですし、それぞれの歌の持っている魅力を多くの人に伝えることも大好きです。そもそも名曲と出合い、流麗なメロディーに聞き惚れ、歌詞の持つ深遠な意味合いに触れることは、女優業を続けていく上で、とても貴重な肥やしになっています。

 もう国民的スーパースターですよね、サザンオールスターズは。デビュー当時からの大ファン。リーダーの桑田佳祐さんの圧倒的な存在感に魅了されました。お会いしたことは一度もありませんが、私と同じ「空気」を感じていました。うまく表現できないけど、「いくつもコンプレックスを抱えながら、それを前向きに消化して周囲に絶妙な気配りのできる人」のような気がしています。一方的にそう思っているだけ、ですが。

「真夏の果実」(90年7月リリース)は桑田さんが監督・音楽を担当した映画「稲村ジェーン」の主題歌としても知られていますね。

「夢中だった、大好きだった」と週刊誌で書いてくれた桑田佳祐さん

 20歳になる前に「ハレンチ学園」に出合い、30歳前に「北の国から」に出合いました。そして40歳ちょっと前の頃の私って「何を演じたいのだろう? どんな女優を目指すべきか」と自問自答していました。「ファンです!」と言っていただく男性に会うと「ハレンチ学園、いつも見てましたよ。何度もお世話になりました」と言いながらニヤリとされることが多かった。それが何だかイヤでしょうがなかった時期でもありました。

♪泣きたい気持ちは言葉にできない こらえきれなくてため息ばかり~。私の心情そのままの言葉でした。物悲しいメロディーと一緒に胸にグサッと突き刺さりました。

 今は年齢を重ねたこともあるでしょう。「ハレンチ学園」で私のことを何十年も覚えてくれる、懐かしいとうれしそうな顔をしてくれる……このことを素直に喜ばないといけないと思えるようになりました。歌自体はラブソングだと思いますが、惑っていた私に寄り添い、支えてくれた曲です。

 桑田さんが週刊文春にコラム「ポップス歌手の耐えられない軽さ」を連載されていましたが、その中に「ハレンチ学園の児島美ゆきさんには夢中だった!! 大好きだった!!」とありました。もううれしくてうれしくて、ピョンピョン跳びはねちゃいました。ぜひ一度お会いしたいと思います。 

別れた時に知った「Hotel Surf-rider」

 命を救ってくれた曲との出合いもありました。ミュージシャンの濱田金吾さんの「Hotel Surf-rider」(80年6月リリース)です。

 30歳の時に52歳の高倉健さん(2014年死去。享年83)と恋に落ちました。きっかけはクニさん(田中邦衛)です。

「今、一緒に食事をしている(高倉)健さんが美ゆきの演技を凄く褒めてくれている」とクニさんから電話がかかってきました。ご本人に代わって「こごみ役がとてもステキでした。電話番号を教えていただけませんか」と言われました。

 何度かの電話で「ウチでコーヒーを飲みませんか」と誘われ、乃木坂のマンションに行きました。剛ちゃん(本名・小田剛一)は、私の手料理をおいしそうに食べてくれたり、膝枕をしてあげると「こんなに幸せでいいのかなぁ」と涙ぐんでくれたり、とても幸せな時間を共有しました。

 1年ほどして2人の交際が報じられました。すると「しばらく会わない方がいい。半年でも1年でも待つ。待っていてくれ」と言われました。

 その瞬間に「捨てられた!」と思ってしまった私は、トランクに服や日用品を詰め込んでマンションを飛び出してしまったのです。つらくてつらくて、死にたいと思いました。そんな時、共通の知人を通して面識のあったキンちゃん(濱田金吾)が作曲した歌を知ったのです。

 松本隆さん作詞の「恨んでないと言ったら嘘になる」のメロウな旋律に乗ったキンちゃんの高音ボイスを聴くたびに号泣していた私ですが、時間の経過とともに泣かないで聴けるようになり、いつしか口ずさめるようにもなりました。

 キンちゃんがギター、ベース、キーボードでサポートしてくれるイベント「児島美ゆき『ハレンチ学園』51周年記念特別公演 TALK&LIVE」を8月9日に杉並・高円寺で行います。コロナ禍の中、ホッとなごめるようなイベントにしたいと思います。

(聞き手=絹見誠司/日刊ゲンダイ) 

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