決定的瞬間を撮らずに現場から撤収することは「敗北」を意味する
「俺たちのやってる仕事はな、ゴキブリかドブネズミ以下なんだよ」
映画「SCOOP!」で中年パパラッチ役の福山雅治が言えば、その相棒で新人記者役の二階堂ふみは「マジ、最悪ですね」と応じる。芸能人や政治家、著名人のひた隠す秘密を暴き、決定的な証拠写真を商業媒体に掲載する。社会通念上で言えばアウトだろうし、道義的にも褒められたものじゃない。そして何より、キツくてつらい。
車で張り込みもフルスモークが禁止の今、ただ座ってカメラを構えていればいいというわけにもいかない。ウインドーを閉め切った後部座席で息を潜め、エンジン停止でエアコンもない車内で気配を消す。当然、夏は汗だらだら、冬は寒さで歯がガチガチ音をたてる。
たばこもNG。空腹はウーバーに配達を頼む記者もいるそうだが、大体はコンビニのおにぎりなどでしのぐ。トイレも極限まで我慢する。警察の職質などへのカバーストーリーも用意しているが、不審者と通報されたら即アウトだし、ターゲットに察知され、詰め寄られたり、揉めても駄目。記者はキックボクシングなど格闘技を身につけている者が多く、カメラマンも元自衛官だったりするものの、決定的瞬間を撮らずに現場から撤収することは敗北を意味する。