<32>早貴被告は「兄を幸せにしてくれますか?」の問いに曖昧にほほ笑んだ
私と早貴被告とHさんの3人は、野崎幸助さんをホテルの部屋の前まで見送ってから、ロビー階の喫茶店でお茶をすることになった。
「緊張したでしょ。大丈夫だからね」
運ばれてきたコーヒーを前にしてHさんは、早貴被告に気を使ってねぎらいの言葉をかけた。
■結婚についての質問に面食らった早貴被告
「あんな兄だけど、結婚願望があるのよ。あなたは兄を幸せにしてくれますか?」
突然の質問に早貴被告は面食らった様子だった。
「……」
どのように答えていいのか分からず、曖昧にほほ笑んでいる。
「まだまだ社長のことが分からないので……」
しばらくして、言葉を選びながらやっと答えた。
「そりゃあ、そうよねえ、まだ21歳でしたっけ?」
こくりとうなずいた。