<62>起訴後にようやく明かされたドン・ファン宅強盗犯の素性
一方で、暴力団への上納金については、一切触れられていなかった。
「ピンポイントでドン・ファン宅を狙っているんだから、内情を知っている誰かが犯人に入れ知恵したんだろうね。そうじゃなかったら、午後7時に窓ガラスを割って侵入する強盗なんてあり得ない。ドン・ファンが7時には就寝しているか、もしくは東京の聖路加国際病院に行っていると思ったんじゃないかな。ともあれ、誰かが関与しているはずだ」
私もマコやんに言ったが、警察は第三者の関与を否定し、単独犯であるとした。裁判は1度しか開かれず、予想通りに執行猶予が付いた判決が下った。この裁判で感じたのは警察と検察のやる気のなさであった。
この事件から1年以上が過ぎて現れた男女2人組の態度にも、強烈な違和感を覚えた。口では社長礼賛を繰り返すが、ドン・ファンの本を読んでいないことは明らかだった。1万円札を挟んだ特製名刺のことも、医者にお金を貸したことも知らなかった。
「今日は大事な用事がありますので、社長はこれから出掛けなければならないんです」