<60>「本を読んで会いに来ました」ドン・ファン宅に怪しい男女2人組
「吉田さん、家におかしな2人組が来ているので、急いで来ていただけませんか?」
ホテルの部屋にいた私に、早貴被告が慌てた声で電話をかけてきたのは昼すぎのことだった。
なんでも野崎幸助さんの本を読んで会いに来た2人を家に上げてしまった、というのだ。取り急ぎ自宅に向かうと、途中で紙袋を下げた早貴被告とばったり会った。
「社長が2人組にプレゼントをするって言うので、アプリコに梅干しを取りに行っていたんです」
アプリコは梅干しの販売もしていて、地元の業者に頼んで、特別に作ってもらっていたのだ。20センチ四方もある大きな容器に南高梅の梅干しが入っていて、ドン・ファンはこれを贈り物として活用していた。それを何個も詰めた箱入りの段ボールは持ちきれないから、宅配便で送るのが常であった。
それは愛人に対しても同じであって、宅配便にすることで送り先の住所を手に入れることができる。それがドン・ファンの狙いでもあった。早貴被告もミス・ワールドも、この方法で住所や本名がバレていたのだ。