江戸の庶民が本当に目の前にいるかのような“志ん朝ワールド”を舞台袖で体感
初めて生の高座を拝見したのは、1990年代の半ば、吉本の劇場で定期的に行われていた笑福亭仁鶴師匠との「仁鶴・志ん朝二人会」でした。
一面識もありませんでしたが、仁鶴師匠に可愛がっていただいていた縁で、舞台袖で見せていただくことに。仁鶴師匠からは「自分(君)、ええとこで見てんな……」とニヤリ。なんともいえないオーラをまといながら現れた志ん朝師匠に“うわ~生の志ん朝や”と興奮しながら、公演とはなんの関係もない立場でしたが「よろしくお願い致します」と頭を下げると、笑顔で「よろしくお願いします」と高座に上がっていかれました。
噺が始まるとその輝きは一段と増し、まるで江戸の庶民が本当に目の前にいるかのように感じられる“志ん朝ワールド”に引き込まれていました。所作の美しさ、声の心地よさ……舞台袖だからこそ伝わってくる生の声の迫力たるや、最高にぜいたくな時間でした。
それから数年後に私の構成していた番組にゲストで来ていただいて、初めてまともにお話をさせていただくことに。大師匠、大看板でありながら、腰が低く、打ち合わせの時も笑顔を絶やさず、私のような若造の説明にもいちいちうなずきながら聞いて下さいました。