江戸の庶民が本当に目の前にいるかのような“志ん朝ワールド”を舞台袖で体感
番組が終わり、局内の喫茶室にいるとプロデューサーが直接番組とは関係のない若いディレクターを連れてきて「この男、昨日から志ん朝師匠が来られるいうんで舞い上がってまして(写真を)一枚撮っていただけないか言うとるんですが、よろしいでしょうか?」。横で恐縮しながら「よろしくお願いします!」と体を90度に曲げて挨拶をしている。
志ん朝師匠は「私でよければ」とガチガチに緊張している彼に寄り添い「こんなかっこう(ジャケット)でいいのかな? もっとも着物にしてくれって言われても今日は持ってないんだけど」と満面の笑みを浮かべて写真に納まる。学生時代から高座に通っていたと言うと「そうですか、うれしいですね。これが女子学生ならなおうれしいけど」などと冗談も交えつつ「若い方が寄席に足を運んでくださるのはありがたいですね。まだまだ頑張んなきゃいけないなと思いますね。これからも見てやってください」と握手をされました。
彼を見送ると「私は大阪好きでしてね。若いころは親父(古今亭志ん生師匠)のお供で来てましたけど、なんかいいですね大阪という町は、都会なんだけど東京の下町とはまた違う風情があって、空気感ていうんですかね」と話されて、カメラを片手に大阪の街を歩き、時には銭湯にも行かれると伺い、東京の落語家さん、それも大看板の志ん朝師匠が大阪をこよなく気に入ってくださっていたことがうれしかった。