著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<68>ノスタルジーは写真の原点であり、人間としての感情の原点だね

公開日: 更新日:

東京慕情<1>

 オレは東京の下町(台東区)三ノ輪に生まれて、東京の町をずっと撮り続けてきた。「東京慕情」(1999年刊写真集)の写真は、作家の小林信彦さんと東京を歩いて撮影したんだよ。小林さんが雑誌(文芸誌「海」)の連載を始めるときに、声をかけてくれたんだ。雑誌に載った、三ノ輪の下駄の看板がある実家を撮ったオレの写真と文章を覚えててくれてね。だから、このときは、自分一人で勘だけを頼りに歩くのとは違って、小林さんとの道行き。誰かと一緒に歩くのもおもしろい。自分が決して行かないようなところへ連れてってくれるからね(「海」の連載は1983年~4年、後に共著「私説東京繁昌記」〔1984年刊〕。連載32に掲載)。

 このときは、小林さんについていくという感じだからね、この路地が気に行ったと思っても、あまり長居をしない、通りすがりふうくらいのスピードで撮ってる。写真に妙な動感があるし移動感があっておもしろいね。

 これは浅草の雷門、人が多くてさ、ドドドって感じで出てくるんだよ。

 これはストリップ劇場のロック座、建て替えられる前だね。










 次はアサヒビヤホール。今は、きんとん雲みたいなのがのっかってるよな。こーゆー写真見てると、なんか感じるだろ。デジャ・ヴュってゆーかさ、もともと誰でも心の中には持っているものなんだよ。郷愁とか、過去が忘れられないとか、そーゆーことが写真なんだから。写真を撮る行為はノスタルジーを残していくこと。ノスタルジーは写真の原点であり、人間としての感情の原点だね。




 柳橋、ここもイイねぇ。小津安二郎の映画みたいだろ。ちゃんと老夫婦が通ってくれるんだよ。












 これは人形町の大正(8年)創業の喫茶店。このおばあちゃん、イイ笑顔だよ。幸福論だね。ここで小林さんと待ち合わせたんだよ。

(構成=内田真由美)
 

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    周囲にバカにされても…アンガールズ山根が無理にテレビに出たがらない理由

  2. 2

    田中圭“まさかの二股"永野芽郁の裏切りにショック?…「第2の東出昌大」で払う不倫のツケ

  3. 3

    中森明菜が16年ぶりライブ復活! “昭和最高の歌姫”がSNSに飛び交う「別人説」を一蹴する日

  4. 4

    永野芽郁「二股不倫」報道で…《江頭で泣いてたとか怖すぎ》の声噴出 以前紹介された趣味はハーレーなどワイルド系

  5. 5

    永野芽郁“二股肉食不倫”の代償は20億円…田中圭を転がすオヤジキラーぶりにスポンサーの反応は?

  1. 6

    永野芽郁“二股不倫”疑惑「母親」を理由に苦しい釈明…田中圭とベッタリ写真で清純派路線に限界

  2. 7

    のんが“改名騒動”以来11年ぶり民放ドラマ出演の背景…因縁の前事務所俳優とは共演NG懸念も

  3. 8

    「ダウンタウンDX」終了で消えゆく松本軍団…FUJIWARA藤本敏史は炎上中で"ガヤ芸人"の今後は

  4. 9

    フジ経営陣から脱落か…“日枝体制の残滓”と名指しされた金光修氏と清水賢治氏に出回る「怪文書」

  5. 10

    大物の“後ろ盾”を失った指原莉乃がYouTubeで語った「芸能界辞めたい」「サシハラ後悔」の波紋

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  2. 2

    周囲にバカにされても…アンガールズ山根が無理にテレビに出たがらない理由

  3. 3

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  4. 4

    田中圭が『悪者』で永野芽郁“二股不倫”騒動はおしまいか? 家族を裏切った重い代償

  5. 5

    中森明菜が16年ぶりライブ復活! “昭和最高の歌姫”がSNSに飛び交う「別人説」を一蹴する日

  1. 6

    永野芽郁「二股不倫報道」の波紋…ベッキー&唐田えりかと同じ道をたどってしまうのか?

  2. 7

    レベル、人気の低下著しい国内男子ツアーの情けなさ…注目の前澤杯で女子プロの引き立て役に

  3. 8

    芳根京子《昭和新婚ラブコメ》はトップクラスの高評価!「話題性」「考察」なしの“スローなドラマ”が人気の背景

  4. 9

    永野芽郁“二股不倫”疑惑「母親」を理由に苦しい釈明…田中圭とベッタリ写真で清純派路線に限界

  5. 10

    大阪万博会場は緊急避難時にパニック必至! 致命的デザイン欠陥で露呈した危機管理の脆弱さ